今回は、母乳研究の第一線で活躍されている、雪印ビーンスターク株式会社の中埜様に、母乳の持つ特性や1960年から行われている母乳調査研究でわかった「母乳と免疫」ついてお話しを伺わせていただきました。

母乳育児で頑張るおかあさんへ、ぜひ参考にしていただければと思います。

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第1回のお話しを踏まえ、第2回である今回は「母乳の持つ免疫力について」お伝えしていきます。

 

母乳の持つ免疫力について

次に「免疫」について解説します。

「母乳の赤ちゃんは病気になりにくい」といわれていますが、感染症に対して予防的な効果がいくつか報告されています。「急性中耳炎」や「RSウイルス感染症」などですね。これがいわゆる母乳の持つ免疫力です。

生まれたばかりの赤ちゃんは免疫力が無くて未熟です。そのため、お母さんの母乳の中にある免疫力を使って、未熟な赤ちゃんの免疫を助けています。

消化管への病原体の付着を防ぐ成分

とりわけ、病原体から守る”場”というのは『消化管』といわれる場所です。

消化管は一見すると体の中にあるようですが、実は外界と触れあうつくりになっています。母乳も外から入ってくるのですが、その際に消化管への病原体の付着を防いで消化管の壁などを守ってくれます。

赤ちゃんの消化管の壁は未熟で、病原体を排除する力(バリアする力)、戦う力も未熟です。
また、たんぱく質を分解する力が未熟で、アレルギーのもとになるアレルゲンが侵入しやすいとされています。

では、そこで「母乳の力(免疫成分)がどう働くのか?」というと、食べものを介して入ってくる病原体やウイルスを、消化管の内側で付着を防いで排除、母乳の中にあるオリゴ糖が善玉菌を増やす(悪い菌を減らす)のです。
さらに、それでも生き延びた病原体に対しては、RNA(リボ核酸)のはたらきでバリア機能を高めて丈夫な体にしてくれることで、病原体を退治する助けになります。

【母乳の免疫成分のはたらき】

  1. 消化管への付着を防ぐ
  2. 消化管のバリア機能を高める
  3. 病原体と戦う力を高める
  4. アレルギーになりにくくする

 

なお、お伝えしてきている病原体の付着を防いでくれるはたらきに関してですが、「シアル酸」「ガングリオシド」「母乳オリゴ糖」という3つの成分がとくに関与しています。なお、シアル酸、ガングリオシドなどはあまり聞かれない言葉かと思いますが”糖”の一種です。

 

 

「シアル酸」「ガングリオシド」

こちらイメージ図ですが、シアル酸やガングリオシドは病原体が消化管の粘膜に付着するのを防いでくれます。

次にこの画像は、こちらはヒト消化管の細胞をシャーレで培養しているものです。図の左はガングリオシドが無い状態で、右はあらかじめガングリオシドを添加したものです。

 

この中に大腸菌を加えると、ガングリオシドが無いもの(左図)は細胞組織が剥がれてしまっていて、ガングリオシドが添付されているもの(右図)では、細胞がきれいなまま整えられていて、大腸菌の影響がないことがわかります。

 

続けてこちらのグラフですが、同様の実験を動物実験で確認した結果です。

 

無菌マウスの消化管に病原性の大腸菌を加えて、消化管内にどれだけ菌がそれぞれの腸にくっついていたか?という実験ですが、ガングリオシドをあらかじめ加えておくと菌の付着が少なくなることがわかりました。(棒グラフ赤:ガングリオシド投与群、緑:非投与群)

なお、この実験とは別に「毒素」を比較した際も毒素の付着量の減少や、毒素による死亡率の減少も確認しています。

このようなはたらきが母乳を飲んだ赤ちゃんのお腹の中でも起きているのではないか、と考えられます。

 

 

オリゴ糖

次に母乳に含まれる「オリゴ糖(母乳オリゴ糖)」についてです。このグラフ図のように、母乳の成分としては糖質が一番多く、その中でも乳糖も多く含まれています。また、母乳の糖質にはオリゴ糖も含まれていて、オリゴ糖もたんぱく質と同じくらいに多くの量が含まれています。なお、オリゴ糖はお腹の中の腸内細菌に対して影響を与える成分です。

母乳に含まれる母乳オリゴ糖(ガラクトシルラクトース)と、母乳には含まれないオリゴ糖の一種であるフラクトオリゴ糖、ラチュロースを比較しました。

母乳オリゴ糖の場合、善玉菌だけを腸内で増やしてくれますが、フラクトオリゴ糖やラチュロースの場合、善玉菌に加えて悪玉菌にも利用されてしまいます。

母乳オリゴ糖は悪玉菌に利用されにくいので、赤ちゃんの腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を整えて便性に影響を与えます。例えば、赤ちゃんのうんちが黄色くて臭いが甘酸っぱいのはオリゴ糖や腸内細菌によるものです。

 

消化管のバリア機能を高める成分(リボ核酸、ポリアミン)について

消化管への菌の付着やバリア、ということでもうひとつ。

「母乳成分とアレルギー発症の関連」ということで、第2回目の母乳調査のときに母乳をいただいたお母さんに対して「その5年後にお子さんがアレルギーになったか?」を伺いました。そこで「リボ核酸」「ポリアミン」という成分が発症と関係しているとわかりました。

 

 

5歳までにアレルギーを発症した方・しなかった方、それぞれが飲んでいた母乳中のリボ核酸とポリアミン濃度を比較すると、アレルギー発症しなかったお子さんが飲んでいた母乳中のリボ核酸とポリアミン濃度が高いということがわかりました。

 

 

では、なぜこのような結果になったのか?の考察としては、赤ちゃんは未熟でアレルゲンが体の中に入ってきてしまう、そこに母乳中のリボ核酸とポリアミンが働いて腸を丈夫にする、それによってアレルゲンが体に入っていかないのでは?という仮説を立てました。

そしてこの仮説の元、動物実験で消化管機能の発達やアレルギーが実際に体の中に入るかどうか?を実験をしてみました。

 

 

ポリアミンの消化管細胞の発達に及ぼす影響

実際に消化管機能が発達する状況を調べてみたのがこちらの写真図です。

こちらは赤ちゃんネズミの腸を輪切りにした腸の絨毛ですが、図右はポリアミンを与えたもの、図左は何も与えていないものになります。

赤い矢印箇所を見ていただきたいのですが、ポリアミンを投与した群ではそうでない群と比べて“空胞化細胞が消失”していることが観察されました。

なお、空胞化細胞は細胞中に消化酵素を含み、腸管内の栄養素を未分解のまま取りこんで消化する役割を果たすと考えられており、未熟な細胞や腸に多いとされています。そのため、「空胞化細胞の消失 → 消化機能の発達」と考えられます。

 

 

アレルゲンの侵入に及ぼす影響

次にからだの中にアレルゲンが入っていくかどうか?の実験です。

ラットにリボ核酸やポリアミン食で飼育します。その後、ある時期になったらアレルゲン(卵白アルブミン)を投与して、そこから4時間後に採血をします。そこでもし消化管に消化されないで血中にアレルゲンが多く出てくるのであれば「通り抜けている(アレルゲン侵入に機能していない)」、一方で防いでいるのであれば血中にアレルゲンの出は少ないので「アレルゲン侵入に機能している」のだろう、という実験です。

 

 

その結果、このように血中にはリボ核酸はほとんど検出されず、ポリアミンに関しては有意な差とまでは言えないですが、少ない傾向にありました。

このような結果からリボ核酸やポリアミンの摂取で、アレルゲンの体内侵入量を減らしているのだろう、と考えられます。つまり、これらの成分が消化管の壁を強くしていると考えられます。

【母乳の免疫成分のはたらき】

  •  病原体の消化管への付着を防ぐ (感染防御)
  •  消化管のバリア機能を高める

他にも、別の研究機関でのデータとはなりますが「病原体とたたかう力を高める」「アレルギーになりにくくする」といったデータもあります。

 

このような調査研究結果に基づき、弊社の粉ミルクの商品開発に活かしています。

【参考】

赤ちゃんのための商品 乳児用粉ミルク「すこやか M1」

(第2回終)

 

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