仕事を辞める際、「失業保険」の受給を忘れてはいけません。
ですが、妊娠した場合は失業保険の受給対象となるのでしょうか?
そこでこの記事では、
- 妊娠しても失業保険がもらえるまれなケース
- 行なっておきたい失業保険対策・手順
についてお伝えします。
目次
失業保険の中身をおさらい
失業保険とは?(失業給付金)
失業保険は会社を辞めたあとの一定期間、生活に困ることのないように金銭面のサポートをしてくれる制度。
雇用保険制度の中にある基本手当という項目が失業給付金に該当し、「失業したらもらえる給付金」=「失業保険」と呼ばれることもあります。(そのため失業保険と失業給付金は同じ意味合いとなります。)
急な会社の倒産での退職(雇用主都合)・自己都合による退職、いずれの場合でも受給資格があれば適応されます。
失業保険を受給できる対象者とルール
1.ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
したがって、次のような状態にあるときは、基本手当を受けることができません。
- 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
2.離職の日以前2年間に、被保険者期間(※補足2)が通算して12か月以上あること。
ただし、特定受給資格者又は特定理由離職者については、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可。※補足2 被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1か月ごとに区切っていた期間に賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1か月と計算します。
ハローワークの規定を見ていただくとわかるように「妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき」とあるため、妊娠したら失業保険を受け取る資格が無いように思えます。
ですがが、一方で「ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり」とも書かれています。そのため、実は妊娠した=失業保険を受け取ることができないとは断定できない側面があります。
産後はいつから受給できる?
① 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性が請求した場合
においては、その者を就業させてはなりません。
② 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはなりません。ただし、産後6週間
を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に
就かせることは差し支えありません。
このように厚生労働省による「産前産後休業その他の母性保護措置」によると、仮に妊婦さん(労働者側)の状態が安定し、働く意思があったとしても、産前6週間・産後8週間の女性労働者には就業制限があるため、産後8週間以降でなければ受給はできません。
失業保険で支払われる金額
失業保険の計算方法は「基本手当日額×日数」、基本手当日額は「日給×給付率(0.5~0.8)」で算出できます。
[例]
30歳、月給25万円、被保険者期間を5年以上10年未満の場合は以下。
- 基本手当日額:5,331円
- 給付日数:90日間(会社都合なら180日間)
- 合計金額:479,790円
なお、詳しい給付金の計算方法なら以下の計算ソフトが便利です。
妊娠しても失業保険を受け取れる可能性のある稀なケース
雇用主都合×働ける状態
- 働ける状態なのに雇用主都合でやめざるを得なくなり、解雇までの日取りが確定した。
- その時は妊娠していることがわからなかったがので失業保険申請をして求職活動をする。
- 求職活動中に妊娠していることが発覚した。
この場合、雇用主都合の解雇となるので失業保険を受け取る資格があります。
ただし、雇用主都合での解雇によって発生した失業保険の受取期間中にイレギュラーとして妊娠が発覚した形になるため、正規の金額と比べてどれだけもらえるか?は判断が難しい面があります。
妊娠してるが、すぐに求職活動ができる状態なら受給対象にはなる
私の家内は、同様の状況で、隠さずに相談してちゃんと失業給付を貰いましたよ。
妊娠したことがわかったからといっても、まだ出産まで8ヶ月もあり、十分働けるし、働きたい。
出産と育児の都合では、働くことができないのはわかっている(産後休暇は強制的にとらなければならないし)けれど、産前・妊娠したら無理に休まなければならないという法的な規制はないはず。少なくとも、今、現在、働ける状態であり、求職している。妊娠していることを理由として働ける状態でなくなるのは、ずっと先のこと。
それで、どうして今の段階で、受給資格がないといえるのか合理的な説明をして欲しい。
企業が妊娠していることで採用しないとしても、それは私の責任ではない。
また、そういう理由で仕事を与えないことも男女雇用機会均等法に反するのではないか?
と、ハローワーク職員と堂々と交渉して、母子手帳まで見せて出産予定日を言って、求職活動をして失業給付をもらいましたよ。すくなくとも、妊娠初期であれば、まだまだ働く意思を示して何が悪い?という話だと思いますけれど、それはハローワーク職員との交渉の仕方なのでしょうか。
引用:Yahoo!知恵袋
「実は妊娠した=失業保険を受け取ることができないとは断定できない側面があります。」と上述しましたが、この体験談のケースのように妊娠してもすぐに求職活動ができる状態なら受給対象にはなります。
そのため、ハローワーク側との交渉にもよりますが受給を希望する場合はハローワークの窓口で交渉してみても良いでしょう。
受け取れる場合は「失業給付は4週間ごと」のルールを忘れずに
失業保険はハローワークに給食の申し込みを行い、4週間の就職活動を行っても就職ができなかった場合に限り、その4週間分を受け取ることができます。
そのため、4週間ごとに失業認定を受ける必要があるので忘れずにご注意ください。
流産など緊急の場合
なお、流産などの緊急事態で4週間ごとの認定を受けることができなかった場合、電話でハローワーク側に事情を説明し、後日認定を受けるようにしてください。
失業保険は妊娠したら基本的にもらいにくい理由
妊娠は「すぐに働けない状態」の方が多いので失業保険の対象外になりやすい
ハローワークの規定に「妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき」とありますが、妊娠すると「すぐに働けない状態(仕事ができない状況)」になることが多いものです。
そのため、妊娠するとほとんどの場合で失業保険の対象から外れてしまうのが一般的です。
そのため、「特定理由離職者」として延長申請を行う
女性が妊娠してすぐに働けない状態は「特定理由離職者」に該当します。
妊娠・出産によって退職した場合、特定理由離職者に該当するため受給期間を最長3年間(受給期間も含めると4年間)延長することができます。
特定理由離職者として失業保険の給付延長を申請すれば失業保険の資格を失わず、申請を行っておけば出産後で働ける状態(出産・育児がひと段落した状態)で就職活動を再開した時に、失業保険を受け取りながら就職活動ができます。
特定理由離職者という制度を知らず、「出産のために離職した場合は失業給付金を受け取る資格はない」と思い込んで申請手続きをせずに失業保険を受け取らなかった、というママも少なくありません。忘れないように必ず申請を行ってください。
なお、特定理由離職者は妊娠・出産・育児などにより離職した以外で下記も該当します。
[特定理由離職者の該当例]
- 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退などにより離職した者
- 父もしくは母の死亡、疾病、負傷のため、父もしくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合または常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷などのために離職を余儀なくされた場合のように、家族の事情が急変したことにより離職した者
- 配偶者または扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者
など。
失業保険は妊娠・出産による退職でも受け取り可能
つまり、妊娠・出産による退職の場合は直ぐに失業保険が適応されるわけではなく、『失業保険を受け取ることはできるが、特定理由離職者として延長申請を行った上で就業できる環境になったのちに受け取り対象となる。』とご理解ください。
失業保険の給付延長の手順
延長申請の期限
受給期間延長の申請期間は退職して30日目の翌日(31日目)から1ヶ月以内。
この期間内に管轄のハローワークに必要書類を提出して手続きを行ってください。
なお、ママが動くことができない状態なら代理人や郵送による手続きでも可能です。
申請場所・手続き
失業保険の給付を延長するための申請手続きは、お住まいの地域で管轄されるハローワークで行ないます。最寄のハローワークではありませんのでご注意ください。
なお、管轄が分からない場合は予めインターネットで検索して調べてましょう。
必要な提出書類
[必要書類]
- 雇用保険被保険者離職票(1)
- 雇用保険被保険者離職票(2)
- 身分証明書(運転免許証など)
- マイナンバー確認証明書(マイナンバーカード、通知カード、住民票など)
- 印鑑
- 写真(縦3cm、横2.5cm以上の上半身のもの2枚。3ヶ月以内に撮影されたもの)
- 母子手帳
- 普通預金通帳(申請者本人名義のもの)
これらが失業保険を申請する際に必要な書類となります。
なお、ハローワークで最初に行う手続きは失業保険の受給申請ではなく求職の申し込みとなります。(求職申込書に就職先の希望条件や経験した仕事などを記入。)
その後、窓口で離職理由などの質問を受け、問題がなければ書類が受理されたのち、失業給付金の受給資格を得ることになります。
マイナンバーが必要
2016年からマイナンバー制度が導入され、平成28年1月以降の乳幼児医療費助成の申請の際にはマイナンバーの個人番号の提出が必要になりました。
もし「自分のマイナンバーがわからない」という場合、住民票がある市区町村役場で再発行してもらいましょう。
妊娠時における失業保険の受給期間は何年?
一般受給資格者の場合、再就職のための準備に余裕があると考えられるため失業保険の受給期間は雇用保険に加入していた期間が10年未満で90日、10年以上20年未満で120日、20年以上で150日間となります。
一方、倒産や解雇によって強制的に退職させられた場合は特定受給資格者に該当するので、やむを得ず離職しなければならなくなったため再就職の準備をするための時間的な余裕がありません。
[特定受給資格者の該当例]
- 倒産に伴い離職した者
- 事業所において大量雇用変動の場合、1ヶ月に30人以上の離職を予定する届出がされたため離職した者および当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したために離職した者
- 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みの無い場合を含む)に伴い離職した者
- 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者
- 解雇などにより離職した者
- 賃金の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかったことにより離職した者
など。
また、失業保険を受けられる期間は雇用保険に加入していた期間と退職したときの年齢によっても異なるため、気になる場合はハローワークの窓口で相談してください。
【参考】失業給付金の受給期間延長手続きの手順まとめ
- 退職後に勤務先から離職票(雇用保険被保険者離職票)をもらいます。
- 退職して30日目の翌日(31日目)から1ヶ月以内に、お住まいの管轄のハローワークで失業給付受給期間の延長手続きをします。この際、「最寄のハローワーク」ではなく「管轄のハローワーク」となりますので、間違うことのないようあらかじめ確認しておきましょう。
- 出産後、ママ自身の体調や育児が落ち着き「そろそろ再就職を」と考えることができるようになったら求職活動を開始し、ハローワークで失業給付の受給の申請を行ってください。
- 7日間の待機期間のあと、28日経過ごとの認定日にハローワークへ行き、「失業認定」を受けます。
- 失業認定されると、指定した口座へと失業給付金が振り込まれます。
- 手続きはママ本人でなくとも代理人でも可能
失業給付金の延長申請と申請の解除について
延長解除の条件
求職活動が順調に進まなかった・急なトラブルが発生して求職活動自体ができなかった、といった場合でも時間は経過していきます。
受給期間の延長は【妊娠・出産・育児(3歳未満に限る)】【病気やケガ、親族等の介護等のため働くことができない状態が30日以上続いた】この場合において申し出が可能です。また、延長できる期間は『最長で3年』までとなります。
該当となる方で、求職活動が順調に進まなかった時は受給期間の延長申請を行いましょう。
再延長はできない
なお延長申請の再延長は行うことができません。そのため、延長を解除するタイミングはご自身の状況を鑑みて判断してください。
また、受給期間の延長中に1度でもアルバイトなど仕事ができる状態とみなされることを行うと延長が解除されます。併せてご注意ください。
妊娠を隠して不正受給はしない
妊娠を隠しての不正受給は決して行なわないようにしましょう。
不正を行った場合、「失業手当の支給停止」「失業手当の返却命令と納付命令」等の罰則があります。
特に「失業手当の返却命令と納付命令」の場合、不正受給した金額の全額返却+悪質な場合は不正受給した額の2倍の額を罰金として納付(計3倍の額)という、金銭的に大きな罰則がかかります。
失業保険を受給中に妊娠が発覚した場合は?
失業保険の受給中に妊娠が発覚するケースもあります。
その場合、特に特殊な考えをする必要はなく、これまでお伝えしてきた内容をもとに以下の流れを汲んでいただければ大丈夫です。
[失業保険を受給中に妊娠が発覚した際の流れ]
- 申告する(不正受給はしない)
- 受給途中から延長申請をおこなう
- 仕事ができる環境になったら残りを受け取る
失業保険の受給前、まだ待機期間中で妊娠がわかった場合
失業保険を受け取る前の待機期間中に妊娠が発覚した場合、「妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき」が該当するために失業保険の給付がなくなる可能性があります。
ですが、「妊娠しても失業保険を受け取れる可能性のある稀なケース」でもお伝えしたように妊娠の状況によってはすぐに就業できるケースもあるので、働ける状態なら受け取ることができます。
この場合、少々デリケートにはなりますが
- 就業できるなら受け取れる(就職活動を行う)
- そうでない場合は延長申請を行う
このように考え、必要な申請を行なってください。
パートの場合の妊娠による失業保険手続きは?
下記の雇用保険の加入条件を満たして働いている場合、バイトであれパートであれ雇用主(会社)は雇用保険の加入手続きをしなければならないとされています。
[雇用保険の加入条件]
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれること
- 1週間の労働時間が20時間以上であること
そのため、パート勤めの場合でも雇用保険に加入していれば失業保険を受け取ることができます。
まとめ
妊娠・出産を迎えるために仕事を辞めなければならなくても、一定の条件を満たせば失業保険を受け取ることができます。
中には「産後また働くかどうか分からないから」「そもそも失業保険を受けることができるのを知らなかった」ということで失業給付金の受給や受給期間の延長行なわないことも多く非常にもったいない。
育児がひと段落したらまた働きたくなる可能性は十分ありますし、金銭的にママも働く必要がでることも考えられます。
失業保険を受ける・受給期間んを延長する、などにデメリットはありません。
産後のあらゆる状況を予測してそのため、再就職する可能性も考え必ず失業保険の受取、もしくは受給期間の延長手続きを済ませてくださいね。
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お仕事を止めたママがぜひ気にかけて欲しいのが妊娠中のママの体づくり。
妊娠中のママの体づくりはお腹の赤ちゃんの健やかな成長・無事の出産へと影響します。
無事の出産を目指すために、お腹の赤ちゃんの成長を助けるためにも妊娠中の体づくりとして必要な葉酸を摂取していきましょう。
葉酸はお腹の赤ちゃんの成長を助け、赤ちゃんの二分脊椎や無脳症などの神経管閉鎖障害の発症リスクを低減してくれることがわかっているため、厚生労働省からも葉酸の摂取が推奨されています。
なお、葉酸の摂取方法について詳しくは「妊娠初期に摂りたい葉酸サプリおすすめランキング|先輩ママも愛用!」でお伝えしていますので、妊娠中の体づくりを考える妊婦さんはぜひご参考になさってください。