妊娠中の妊婦さんは鉄分不足になりやすいので、ママの体とお腹の赤ちゃん、それぞれの健康のためにもこまめな鉄分補給が欠かせません。
そこで、妊娠中の鉄分補給をお考えの妊婦さんに向けて
- 妊娠中におすすめの鉄分補給ができる食べ物・飲み物
- 妊娠貧血の予防と対策
についてお伝えします。
目次
妊婦さんは鉄分不足で貧血になりやすい
妊娠中はお腹の赤ちゃんに優先して血液が運ばれるため妊婦さんは貧血になりやすく、全妊婦さんのおよそ30~40%の割合で貧血になると言われます。
なお、妊娠中に起きる貧血のほとんどが鉄欠乏性貧血によるもの。妊娠中に起きやすいこともあり「妊娠貧血」とも呼ばれます。
鉄分は赤血球中のヘモグロビンの主成分で体全体に酸素を運ぶための重要な役割を持っています。
ですが、妊娠するとママ自身に加えお腹の赤ちゃんにも酸素を送り届ける必要があるのでヘモグロビンの量が増えます。そのため、ママの体内で鉄分が不足しやすくなり貧血にかかりやすくなります。
妊娠中の妊婦さんに必要な鉄分の摂取量
[鉄分の推定平均必要量/1日]※厚生労働省推奨量
年齢 | 非妊娠期(月経なし) | 妊娠初期 | 妊娠中期・後期 | 産後の授乳期 |
18~29 | 6.0mg | 8.5mg | 21.0mg | 8.5mg |
30~49 | 6.5mg | 9.0mg | 21.5mg | 9.0mg |
※参考:日本人の食事施主基準(2015年版)の概要|厚生労働省
妊婦が必要な鉄分摂取量は通常時と比べて最大3倍以上
非妊娠時の鉄分の必要量が6.0mg~6.5mgであることに比べ、妊娠時期によって異なりますが、妊婦さんになると通常時と比べて最大3倍以上(時期による)も鉄分が必要になります。
そもそも鉄分は普段から不足しがちな栄養素の1つ。妊娠中は一層の鉄分補給を心がける必要があります。
妊娠中の妊婦さんは貧血対策が欠かせない
妊娠中に妊婦さんが鉄分不足にかかると貧血・めまいをはじめ、ひどいときは意識を失い転倒して母体やお腹の赤ちゃんに影響がでることがあります。また、重度の貧血になると酸素が欠乏して未熟児や虚弱児など、出産後の赤ちゃんに影響を及ぼすこともあるため、妊婦さんの鉄分補給は欠かせません。
加えて、妊娠後期に入ると出産準備のために血液量が増えますが、そこで鉄分不足で貧血になってしまうと微弱陣痛をはじめ、出産時に難産・弛緩出血、生んだ後に産褥熱、などのリスクが高くなります。
妊娠初期から後期・出産に至るまで貧血対策として鉄分補給は欠かせません。
妊娠中期から鉄分の摂取量がさらに増加
妊娠中期~後期にかけて、非妊娠期に比べて3倍以上、妊娠初期と比べても2倍以上の鉄分量21~21.5mgが必要になりますので、中期以降は特に意識して鉄分摂取を心がけてください。
妊娠中の妊婦さんが補給したいヘム鉄・非ヘム鉄
ヘム鉄
ヘム鉄は肉や魚介類などの動物性の食材に多く含まれ、非ヘム鉄と比べて体内に吸収されやすい性質を持っていて、吸収率は約10~20%と高いのが特徴です。
非ヘム鉄
非ヘム鉄は野菜や穀物、海藻類などの植物性の食材に多く含まれ、非ヘム鉄の吸収率は約1~6%でヘム鉄と比べて低いですが、タンパク質やビタミンCと一緒に摂ることで吸収率を高めることができます。
鉄分の過剰摂取に注意
体内への吸収性を考えるとヘム鉄だけの摂取を心がけた方が良いように見えます。ですが、動物性の食材に偏るのも健康に良くありません。
特にヘム鉄が豊富に含まれるレバーの場合、食べ過ぎるとレバーに含まれるビタミンAが過剰摂取となりますが、ビタミンAの継続的な過剰摂取は産後赤ちゃんに影響(先天性異常)が出る危険があるので、必要量に抑えて鉄分を摂取してください。
一方、非ヘム鉄は植物性の食材のため過剰摂取を気にせず食べられます。そのため、安心して和食や鍋料理に野菜・穀物・海藻類を使うことができます。
妊婦さんにおすすめの鉄分補給の食べ物
鉄分不足になりやすい妊婦さんは積極的に普段の食事から鉄分を摂取する必要があります。
ヘム鉄は肉や魚介類に多く含まれてますが、肉や魚介類が苦手だと多く摂取するのが難しい・苦痛に感じることもあるでしょう。その場合、野菜や海藻類に含まれる非ヘム鉄で鉄分を補給してください。一方、非ヘム鉄の食材だけに偏ると鉄分不足になりやすいので、ヘム鉄の食材も食べてバランスの良い鉄分補給を心がけましょう。
ヘム鉄の食事
[鉄分(ヘム鉄)が多く含まれる食材]
- 煮干し・・・18.0mg
- 干しエビ・・・15.1mg
- 豚レバー・・・13.0mg
- 鶏レバー・・・9.0mg
- カツオ・・・8.0mg
- ハマグリの佃煮・・・7.2mg
- アサリ・・・7.0mg
- レバーペースト・・・6.5mg
- シジミ・・・5.3mg
- ワカサギ・・・5.0mg
- 牛レバー・・・4.0mg
※それぞれ100gあたりの含有量
非ヘム鉄の食事
[鉄分(非ヘム鉄)が多く含まれる食材]
- 切り干し大根(乾燥)・・・9.4mg
- ひじき(乾燥)・・・55.0mg
- 大豆(乾燥)・・・9.5mg
- 大豆(ゆで)・・・2.0mg
- 高野豆腐・・・7mg
- 油揚げ・・・4.2mg
- 納豆・・・3.3mg
- 厚揚げ・・・2.6mg
- 枝豆・・・2.5mg
- 小松菜・・・2.4mg
- ほうれん草・・・0.9mg
- スパゲティ(乾燥)・・・1.4mg
※100gあたりの含有量
【参考1】鉄分の吸収率を上げる食材
鉄分の吸収を助ける食事と合わせて摂取することで、より効果的に鉄を体内に取り入れることができます。
主に以下のタンパク質やビタミンCが多く含まれる食材が該当します。
[タンパク質が多く含まれる食材]
- しらす干し
- 大豆食品(油揚げや豆腐など)
- いわしの丸干
- ハマグリ など
[ビタミンCが多く含まれる食材]
- レモン
- アセロラ
- ピーマン
- ブロッコリー
- パセリ
- 芽キャベツ
- パセリ
- ケール など
【参考2】鉄分の吸収率を下げる食材
[鉄の吸収率を下げる食材]
- コーヒー
- 紅茶
- 緑茶
- 赤ワインなど
これらは鉄分の吸収率を下げるタンニンが含まれているので食前食後に大量に飲まないようご注意ください。
【参考3】貧血持ちの妊婦さんにおすすめのレシピ
貧血気味の妊婦さんにおすすめの美味しくて簡単にできる3つのレシピをご紹介します。
■材料
(2~3人分) ・切り干し大根・・・ひとつかみ ・煮豆(大豆)・・・1パック ・油揚げ・・・2~4枚 ・舞茸・・・適当 ・水・・・300cc ・粉末和風だし・・・適量 ・醤油・・・大さじ1 ・オリゴ糖・・・お好みで大さじ1~4
【作り方】
1.戻した切り干し大根と大豆、油揚げ、舞茸を鍋に入れてください。 2.鍋に水300ccに和風だしの粉末の和風だし、醤油、オリゴ糖を入れて蓋をしたら、中火で10分煮詰めます。 3.10分経ったら火を止めて10~20分ほど覚ましたら完成です。
■材料(2人分)
・ほうれん草・・・3~4株 ・油揚げ・・・2枚 ・酒・・・小さじ2 ・醤油・・・小さじ1 ・粉末和風だし・・・小さじ1/2
【作り方】
1.ほうれん草を4~5cmにざく切りして、油揚げは2cm幅くらいに切ってください。 2.鍋に水100cc、粉末和風だし、酒、醤油を入れたら火にかけて、沸騰したら油揚げを入れて1分煮詰めます。 3.1分経ったらほうれん草の軸、葉の部分の順に入れて、蓋をして弱火で3~5分ほど煮詰めます。 4.かさが1/3以下になったら火を止めてください。あとは、軽く混ぜて完成です。
■材料(2人分)
・スパゲティ・・・140g ・かつお・・・100g ・プチトマト ・スナップエンドウ・・・6本 ・乾燥ひじき・・・大さじ1 ・レモン・・・適量 ・青ネギの小口切り・・・適量 ・白ゴマ・・・適量 ・塩・・・小さじ1と1/2 ・醤油・・・小さじ2 ・こしょう・・・適量 ・オリーブオイル・・・小さじ1
【作り方】
1.かつおは一口大に切ります。プチトマトは半分に切ってください。スナップエンドウはへたと筋を取って斜め半分に切っておきます。 2.ひじきはサッと洗って、たっぷりの水に20分ほど浸してもどしておきます。20分経ったらざるに上げて水を切っておきます。 3.鍋に1.5リットルのお湯を沸かして、塩を入れてスパゲティを茹でてください。茹で上がる1分前にスナップエンドウを入れて一緒に茹でます。 4.フライパンにオリーブオイルを入れて熱してから、かつお、プチトマト、ひじきを炒めます。スパゲティの茹で汁を大さじ4と醤油を加えます。 5.スパゲティとスナップエンドウをフライパンに入れて一緒に絡めます。お皿に盛ったら青ネギと白ゴマを散らして、くし切りのレモンを添えたら完成です。
スナップエンドウは妊娠中におすすめ!
お伝えしてきた食べ物の中でもスナップエンドウは妊娠中の鉄分補給食材としておすすめ。
100gあたりの鉄分0.6mgに加え、妊婦さんに欠かせない葉酸も53μg、カルシウム32mg、など豊富な栄養を持ちます。
また、調理もしやすく、スーパーにも置いてあることが多いので普段から取り入れやすいだけでなく、お財布にも優しいので妊娠中の鉄分補給対策で活躍してくれます。
妊婦さんが妊娠中に飲むべき鉄分補給ドリンク
麦茶で妊婦さんの鉄分補給
手軽に飲める麦茶にはタンニンやカフェインが含まれないので妊婦さんも安心して飲むことができます。
ミネラルと食物繊維が豊富に含まれており、血液をサラサラにする・便秘解消の働きがあります。
ルイボスティー
鉄分を補給することができるルイボスティー。ほかにもカルシウムやマグネシウムなどのミネラルも豊富です。
白湯
水を沸騰させたお湯(白湯)は便秘予防や代謝を上げる効果が期待できます。
作り方は、鍋に水を入れて火にかけ沸騰したら弱火で最低10分沸騰。その後、人肌より熱い程度の50度くらいまで冷ましたら完成です。
鉄分補給の栄養ドリンクもおすすめ!
カプセルやタブレットタイプのサプリメントより、ドリンクタイプのほうが吸収性が優れているので、より早い効果が期待できます。
毎日ビテツが妊娠中におすすめ
グリコの毎日ビテツなら鉄分7.5mgに加え、葉酸200μg・カルシウム200mg・ビタミンC100mg・食物繊維2gなど、妊娠中に必要な各種栄養分を補給できます。
ブイクレスは妊娠中におすすめ
ブイレクスはジュース感覚で気軽に飲める飲料。鉄分5.0mgに加え、亜鉛12mg・葉酸800μg・カルシウム70mg・ビタミンB5.0mg・ビタミンB12μgなど、妊娠中に必要な各種栄養分を補給できます。
アスリーブの効果も侮れない
ウチダ和漢薬のアスリーブも鉄分100mgを補給することができ、ポケットに入れて携帯できるサイズなので「歩く緑黄色野菜」とも呼ばれます。
- 他にもまだあるおすすめの飲み物
上記のほかにも妊娠中におすすめの飲み物は「妊婦さんに良い飲み物22選。お腹の赤ちゃんにも優しい水分補給を」でご紹介してますので、あわせてご参考になさってくださいね。
妊婦さんにおすすめの鉄分補給サプリ
例えば鉄分が多く含まれるレバーでも1日約200gほど食べる必要があり、ほうれん草なら1日約1kg食べないと1日の必要量を満たすことができません。
このように、鉄分は元々吸収率が低いので、食事だけで必要量を摂取するのは簡単ではありません。(鉄分不足の方が多いのがそれが理由の1つ。)
加えて、妊娠中は体調不良やつわりなどが影響して毎日の献立作りも大変になることもあります。
そのため、妊娠中の鉄分補給が困難な場合は普段の食事に加え、専用の鉄分サプリメントで不足しがちな鉄分量を補給する必要があります。
葉酸サプリも貧血・鉄分補給対策としておすすめ
妊娠中、お腹の赤ちゃんの成長に欠かせない葉酸。
厚生労働省が推奨する成分としても妊婦さんの間では有名な成分です。
そんな葉酸を豊富に配合した妊婦さん向けの葉酸サプリを活用者する方も増えてきましたが、葉酸サプリには葉酸だけでなく妊婦さんに必要な鉄分量もあわせて配合されているものが少なくありません。
「妊娠初期に摂りたい葉酸サプリおすすめランキング|先輩ママも愛用!」でもお伝えしているように、葉酸と鉄分の同時摂取ができれば妊娠中の栄養補給対策がより摂りやすく効率的です。
鉄分も摂取できる葉酸サプリで流産予防!
妊娠初期は全妊婦さん共通して流産確率が15%。
原因は先天性異常や無脳症による流産・死産によるによるものです。
先天性異常の場合、赤ちゃん側の問題のため妊婦さん側からの完全な予防はできませんが、無脳症は神経管閉鎖障害により起こるため神経管閉鎖障害の発症リスクを下げる葉酸を摂取することで予防対策を立てることができ、厚生労働省でも普段の食事以外に付加的にサプリなどで摂取することを推奨しています。
参考:厚生労働省、葉酸サプリメントは神経管閉鎖障害の発生リスクを低くする |順天堂大学
お腹の中で無事の成長を助けるために何かしたい・少しでも流産率を減らさないと不安、という妊婦さんは普段の食事に加え葉酸サプリを摂取し、あとで後悔しないためも自分でできる範囲の対策を進めてくださいね。
> 厚生労働省が推奨する葉酸(種類・量)と鉄分を摂取できるサプリならこちら
妊娠中の妊婦さんは鉄分の摂り過ぎに注意
鉄分の過剰摂取を続けると肝機能障害を起こす可能性が高くなります。
そのため、食事でもサプリメントからでも1日の鉄分摂取の上限値40mgを超えないようにしてください。
また、妊娠貧血の予防・対策は食事やサプリメントによる栄養面からの見直しだけでなく十分な睡眠や適度な運動などの生活習慣からも改善できます。
生活習慣が改善すれば血流が良くなり摂取した鉄分も全身の細胞までまんべんなく運ぶことができますよ。
まとめ
妊娠中の鉄分補給はママとお腹の赤ちゃんそれぞれにとって欠かせません。
少しでも吸収率高く・効率よく妊婦さんに必要な鉄分量を摂取するためにも食事やサプリメントなどを上手に活用して、この時期を過ごしていきましょう。