妊娠を希望していても一定の確率で起きてしまう化学流産

妊娠検査薬で陽性反応が出ると嬉しい気持ちになる反面、その後の検査で化学流産とわかると悲しい気持ちになってしまいます。

そんな化学流産に悩む妊娠希望者さんに向けて

  • 化学流産が起こる原因や確率
  • 化学流産になりやすい人の特徴
  • 化学流産を予防する方法

についてお伝えします。

化学流産とは?

化学流産とは

化学流産は市販の妊娠検査薬を使用して陽性反応が出たものの、その後のエコー検査では妊娠を確認することができなかった状態のことをいいます。

精子と卵子が受精して受精卵が子宮内に着床すると妊娠検査薬では陽性反応が出ますが、妊娠状態を継続することができないと赤ちゃんを包む胎嚢を確認できないため化学流産と判定されます。

なお、一般的に言われている流産はエコー検査で胎嚢を確認できたあとに、妊娠22週目未満の検査では胎児の確認もしくは心拍が確認できなかったときに診断されることを指します。

なぜ科学流産という名称?

妊娠したという結果を化学的反応で示されたのに、その後の生理による出血によって胎嚢が確認できない状態になるため化学流産と呼ばれています。

近年では化学流産の件数が増加していますが、その背景には化学的反応によって妊娠したかどうかが確認できる市販の妊娠検査薬を利用される方が増えていることが一因として考えられています。

なお、一般的には化学流産という言葉が使われていますが、正しい医学用語では「生化学妊娠」と呼ばれています。

化学流産は15%の確率で起こる

流産は大きく分けて人工流産と自然流産の2種類に分類されます。

自然流産に分類される化学流産は全体の15%の確率で起こると考えられています。

厳密に言えば流産には含まれない症状

化学流産は妊娠検査薬が使われる以前の頃では誰もわからなかった症状です。

ですが、今は昔と違って市販で妊娠検査薬を手軽に利用できるようになりましたので化学流産が起きたと気づいてしまうケースが増えています。

子宮内膜に受精卵が着床だけに留まるごく初期の妊娠は尿検査を行うことで確認できますが、産婦人科での検診で妊娠が確認できなければ化学流産と解釈できてしまいます。

本来の流産の定義はエコー検査で胎嚢を確認できたあとに、妊娠22週目未満の検査では胎児の確認もしくは心拍が確認できなかった状態を指すため、その定義に含まれない化学流産は厳密に言えば流産とは考えられていません。

参考出典: 流産・切迫流産:病気を知ろう:日本産科婦人科学会

化学流産はどんな症状?生理との違いは?

化学流産 症状

化学流産は一般的な流産特有の腹痛やだるさなどの症状を患うことがないため、化学流産だと気づかないことが多いですが、通常の生理との違いを見て判断することができます。

普段の生理より重い・遅れる

化学流産は一般的な流産とは違って自覚症状はほとんど出ませんが、個人差で生理が重い、生理が遅れるなどの症状で気づくことがあります。

腹痛や腰痛

妊娠するために厚くなった子宮内膜が剥がれるため、通常の生理よりも腹痛を強かったり、腰痛を感じることがあります。

塊の出血・出血量は多め

化学流産をしたときの生理予定日後の出血量は多めですが、今回だけ多かったと判断して化学流産自体に気づかないことは多くあります。

ですが、出血の状態を見ると違いがわかりやすく、通常の生理の出血はサラサラして流れてくるのに対し、化学流産が起きた場合の出血はドロッとして塊が排出されることがあります。

また、出血量は受精卵が体外へ排出されますので通常の出血量よりも多くなることがあります。

痛みはある?

化学流産は痛みを感じるような症状ではありません。生理痛と症状が似ているため、いつもと変わらない生理だったと気づかないケースがほとんどです。(※1)

(※1)着床しかかっている・一度着床したあとに流れてしまった、というときには稀に、1回だけ生理痛よりも痛みがひどい・今までになくうずくまるほどの苦しい生理痛を経験した、という方もいますが基本的には痛みを感じることは少ないです。

参考出典:1.異常妊娠 – 日本産科婦人科学会

基礎体温が下がる

基礎体温

妊娠した状態になると妊娠を維持するために女性ホルモンの一つ「黄体ホルモン」が分泌されて高温期が続きますが、化学流産が起こると高温期から低温期に変わるため基礎体温が下がります。

化学流産の原因は?

化学流産 何が原因

染色体異常が主な原因

化学流産の主な原因は受精卵の染色体異常によるものと考えられています。

染色体異常による流産・ダウン症への影響は?何に心掛けるべきか?」でもお伝えしているように、原因が母体ではなく胎児側によるもののため対策をすることができないのが現状です。

受精卵の約45%が染色体異常を起こしていると考えられており、着床障害を起こしやすい性質を持っています。

また、染色体異常を起こしている受精卵の半数近くは着床されずに月経で流れてしまうため妊娠の維持が難しくなります。

ママの体の冷えやタバコが原因になる可能性は?

体の冷えやタバコが化学流産の原因になる可能性もあります。

  • 冷えによる影響

子宮内膜を形成している子宮と卵巣は、冷えに対して弱い器官と言われています。

子宮内膜は受精卵が着床して継続することで出産へ結びつきますが、子宮と卵巣が冷えると子宮内膜の環境に深く関わる黄体機能が十分に働くことができなくなります。

  • タバコによる影響

タバコの煙には子宮内環境に悪影響を及ぼし、胎児の健やかな成長を妨げてしまう以下の有害物質が含まれています。

名称特徴
一酸化炭素血液を介して胎児への酸素供給を鈍らせてしまう。
ニコチン血管収縮作用によって胎盤の血液量を低下させ、胎児への酸素や栄養を十分に運ぶことができなくなる。
シアン化合物タンパク合成の妨げとなるため胎児の成長に悪影響。

また、間接的にタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙も同様に悪影響ですので周囲の喫煙にもご注意ください。

化学流産が起こる時期はいつ?

化学流産 いつ

化学流産が起こる時期は妊娠4週後半~妊娠5週前半です。

計画的に妊娠を希望されている方の場合、排卵日近くの夫婦生活後7日頃から次の生理予定日の1週間後くらいまでの時期になります。

科学流産を繰り返すことはある?

化学流産 繰り返す

化学流産をしやすい人がいる

化学流産を何回も繰り返す場合は、不妊症の原因の一つとされている着床障害(着床不全)の疑いが考えられます。

参考出典:着床不全の新しい治療法 GM-CSF|不妊治療アドバイスブック|静岡県浜松市の不妊治療/体外受精 アクトタワークリニック

なお、着床障害は子宮筋腫や子宮内膜ポリープなどの病気によって起こる症状で早急に検査が必要になります。

化学流産が繰り返す原因は?

着床障害以外にも化学流産を何回も繰り返す場合、下記に挙げた母体側の原因が考えられますので産婦人科医に相談をしてください

[母体側の原因例]

  • 黄体ホルモンの分泌量が不十分
  • 子宮奇形や子宮の病気
  • 免疫異常
  • 感染症
  • ストレス

正しい妊娠検査薬の使い方

妊娠検査薬

妊娠検査薬の使用は時期・タイミングに注意

生理周期は個人差が出て28日や30日になりますが、排卵日から14日後に共通して誰でも生理がきます(生理予定日)。そして、排卵日から1週間前後で受精卵が子宮内膜に着床します(着床時期)。

受精卵が子宮内膜に着床しただけでは妊娠したとは言えませんが、このタイミングで妊娠検査薬を使用すると受精卵が着床すると分泌されるhcgホルモンに反応して陽性反応を示すことがあります。

妊娠検査薬はhcgホルモンの濃度を計測して妊娠したかどうか?を判定する仕組みであるため、ちょうど着床したタイミングで使用するとフライング検査となり化学流産として誤認する原因になります。

タイミング

なお、着床後すぐに分泌されるhcgホルモン量は少ないですが、排卵日から10日前後から濃度が上昇し、排卵日から12日後には25mlU/mL、14日後には50mlU/mL以上までに至ります。

(※)ただし、hcgホルモンの濃度は50mlU/mL以上に上がるまでの日数は個人差があるため絶対に排卵日から14日後というわけではありませんので注意してください。

生理予定日の1週間後に使おう

市販されている多くの妊娠検査薬は50mlU/mL以上に反応するタイプですが、化学流産を起こさない妊娠の判定をするためには排卵日から14日後ではなく、生理予定日から1週間後に使用するとより確かな判定結果を出すことができます。

生理予定日から1週間後に妊娠検査薬を試してみて陽性反応が出たらほぼ確実に妊娠していると判断できます。

上述したように、hcgホルモンは妊娠したとは判断できない段階の着床タイミングでも分泌されるため、その影響で妊娠検査薬が陽性反応を示すことがあります。

そんな陽性反応を確認後、改めてエコー検査を行い妊娠が継続できていないと診断されると化学流産となります。

化学流産は正式には流産扱いにはなりませんが、その事実を受け止めることは心に大きな負担になるため、心の負担を軽くするためにも妊娠検査薬は生理予定日の1週間後に使うようにしてください。

  • 【参考】もっと早くに確認したいときは

一日も早く妊娠の判定結果を知りたい場合、hcgホルモン濃度が25mlU/mLで反応する高感度タイプの早期妊娠検査薬を使用してください。

順調にhcgホルモンが分泌されていれば生理予定日から2日~3日前から使用することができます。

化学流産を予防するために心がけたい9項目

化学流産 予防

1.着床しやすい体質づくり

着床しやすい体質づくりを行うことは妊娠の継続率を高めてお腹の赤ちゃんを育むだけでなく、化学流産のリスク減少にも役立ちます。

受精はするけれど着床しにくい、妊娠が続かない・継続できないという体質の方は少なくありません。

妊娠初期時の流産のほとんどは染色体異常によるもののため母体側が原因ではありませんが、着床しにくい体質は母体側に問題が無いとは言えません。

  • 着床しにくい体質への改善に向けて

[取り組み例]

  • 着床しやすい状態を維持するために身体を冷やさず常に温かい状態にする
  • 葉酸を摂取して着床する環境を整える

などが着床しやすい体質づくりで代表的な取り組みとなりますので、普段の生活からそれぞれ意識してください。

2.黄体機能の働きを整える

子宮内膜が薄いと着床率に影響するため、妊娠を希望する際は子宮内膜に厚みがあることが欠かせません(目安12~20mm、最低でも8mm)。

数mm単位の世界ですが、着床を続けるためには厚くしたふわふわのベッドのような子宮内膜の状態を維持させる必要があります。

黄体機能の働きが良好であれば着床が維持しやすい厚みを持った子宮内膜が形成され、着床を継続することができます。

参考出典:子宮内膜の薄さと黄体機能 – 茨城県小美玉市の不妊治療・婦人科 小塙医院茨城県小美玉市の不妊治療・婦人科 小塙医院

一方、黄体機能の働きが不十分の場合、着床を継続しにくい子宮内環境となるため化学流産が起こりやすくなります。

その場合、黄体機能不全の可能性が考えられます。

[黄体機能不全の症状の特徴]

  • 高温期が短い
  • 高温期の途中で体温が下がる

など。

黄体機能不全が疑われる場合、食生活を見直すことで改善されることもありますが第一に産婦人科医に相談してください。

3.身体の冷え防止

身体の冷えは黄体機能不全の方や着床しにくい体質の方の多くが悩みとして抱えている傾向があります。

黄体機能の働きに深く関わる卵子と子宮は冷えに弱い性質を持っているため、普段から体を冷やすことのないようご注意ください。

なお、冷え対策として足や腰回りを温めることがおすすめです。

4.適度な運動で運動不足を解消

化学流産の予防には、血液の良好な循環が欠かせません。ですが、運動不足が続くと血行不良を起こして子宮や卵巣周りにある骨盤内の血液循環の悪化に影響します。

特に職場での立ったまま作業や座る時間が長い仕事をされている方は血行が悪くなりやすいの注意が必要です。

適度なウォーキングや散歩などの運動を日常に取り入れ、運動不足を解消していきましょう。

5.禁煙

喫煙は以下の影響があります。

  • 卵巣機能の低下
  • 女性ホルモン分泌が減少
  • 卵巣年齢が老化
  • 卵子の老化(卵子の質が低下)
  • 子宮や卵巣の血管が細く固くなり着床を続けるための子宮内環境に悪影響

また、化学流産を含む流産のリスク自体をを高めてしまうので、妊娠を希望する際はこの機会に禁煙をおすすめします。

参考出典:タバコと妊娠|美加レディースクリニック 公式サイト

6.自律神経の乱れを整える

自律神経が乱れた状態が続くと化学流産のリスクを高める原因となります。

生活リズムの乱れによって自律神経は乱れてしまうため、規則正しい生活を心がけてください。

7.ストレスを溜めない

ストレスは女性ホルモンの分泌を低下させ、生理不順や生殖機能の低下などの原因になります。

そのため、着床を継続するための子宮内膜に影響して化学流産のリスクを高めてしまいます。

ゆったりとリラックスできる環境に身を置く・ご自身なりのストレス解消法を見つける、などストレスを溜め込まないようにしてくださいね。

8.食生活・栄養バランスを整える

普段の食生活による栄養バランスを整えることで子宮や卵子の酸化を抑え、卵子の質低下を防ぐ助けになるだけでなく、着床力に深く関わる黄体機能の働きを活発にさせることができます。

しっかりと1日3食を摂り、偏ることなく野菜や果物も摂り入れつつ栄養バランスを意識した食事を心がけてください。

9.葉酸の摂取が欠かせない

葉酸サプリですが、私は妊娠前から飲んでいて、今は妊娠5ヶ月ですがずっと飲んでいます。
病院の栄養士さんも葉酸サプリをすすめていました。

出典: 妊娠・出産・育児 : 発言小町 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

  • 葉酸が着床を助ける

妊娠希望の方であれば着床率をアップさせるためにも葉酸の摂取が欠かせません。

加えて、着床から妊娠初期(~妊娠15週目)までの期間はお腹の赤ちゃんの成長が特に著しく、且つ中枢神経(脳・脊髄)が一番発達する最重要期間でもあります。

妊活期から妊娠初期までの間で葉酸が不足すると無脳症や二分脊椎など、神経管閉鎖障害(先天性異常)のリスクが高くなることも分かっており、厚生労働省からも葉酸の摂取が推奨されています。

厚生労働省

出典:厚生労働省

あとで後悔しないためにも、着床を助ける妊活期から妊娠するために必要な葉酸量を摂取してくださいね。

参考出典:厚生労働省「神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について」
参考出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要」
参考出典:葉酸普及研究会

  • 葉酸の摂取が心配なら

葉酸は緑黄色野菜などの食材にも含まれていますが、妊活時に必要な1日の葉酸量は普段の食事だけで補うことが難しいため、厚生労働省でも妊娠1ヶ月前から妊娠3ヶ月までは普段の食事から摂取できる葉酸に加え、付加的に1日400μgの葉酸を食事以外の栄養補助食品(葉酸サプリ)で摂取することを推奨しています。

  • 参考:妊活でおすすめの葉酸サプリ

\ 妊活期に必要な葉酸を摂取できる!ベルタ葉酸サプリ /

ベルタ葉酸サプリ

→ 着床しやすい環境を作る葉酸量を得られる【ベルタ葉酸サプリ】

自分を責めないで

妊娠検査薬の精度向上、及び普及率の向上とともに化学流産で悩まれるの女性が増えてきています。

ですが、仮に化学流産になってしまったとしても決して自分を責めないでください。

受精後の日頃の過ごし方が化学流産に繋がったわけではなく、どうしても化学流産になってしまう一定の確率は誰しもが持っているからです。

その確率を少しでも改善し、化学流産が少しでも起きにくくするためにも、妊活の段階から着床しやすい・妊娠しやすい体づくりを心がけてくださいね。